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 降矢なな (ふりやなな)

1961年東京生まれ。絵本作家。ブラチスラバ美術大学・版画科・ ドゥシャン・カ―ライ教授の下で石版画を学ぶ。 その後は本のイラストレーション、版画、絵画を制作し、自作絵本、児童書・絵本の挿絵などを手がける。 和洋両方の味を合わせ持った独特の画風。主な作品にめっきらもっきらどおんどん』『ちょろりんのすてきなセーター』 『きょだいなきょだいな』『おっきょちゃんとかっぱ』『まゆとおに』(以上福音館書店刊)「おれたち、ともだち!」シリーズ(偕成社刊)、 『赤いくつ』(女子パウロ会)、『もめんのろばさん』(ポプラ社)『いそっぷのおはなし』(グランまま社)他多数。スロバキア在住。



ともだちや

『ともだちや』

作/内田麟太郎
1時間100円で友だちになる〈ともだちや〉。おかしな思いつきからはじまった、キツネとオオカミの「おれたち、ともだち!」絵本。 キツネのおかしな思いつきから、友だちになったオオカミとキツネ。おたがいの誤解でけんかをしたり、やきもちをやいたり、 ちょっと苦手な友だちや、新しい友だち……さまざまな友だちに関わるできごとをつづる絵本シリーズ。(偕成社 1998年)

第一作『ともだちや』が生まれて、今年で20年。そして、13冊をもって完結を迎えました◆「友達屋」という題名だけの印象だと、 少し嫌な感じがします。でも、表紙のキツネのいでたちが、これは何か普通じゃない。ちゃんと本を手に取ってみないといけないって思わせます。 そう、読んでみると、とても深い。キツネとオオカミの出会いが、すごい化学反応を起こし、その勢いは、今年完結を迎えた13作まで続きます◆ こういったシリーズ化された作品の中には、期待と完成度がだんだんと乖離してくるものも多く、もうこれ以上やめてほしいと思わせる作品もありますが、 このシリーズに限って、どの本を手にしても裏切られることはありません◆作画も常に丁寧で、読者の意表を突く表現も楽しみの一つ。 ちなみにこの表紙のとっぴな恰好は、どんな相手に出会っても対応できるように、シャイなキツネの苦肉の策、と降矢さんが捻出した姿。 読者から「キツネが次にどんな格好をするのか楽しみです」の声も◆完結編の『さよならともだち』も、ぜひご一読を。



めっきらもっきらどおんどん

『めっきらもっきらどおんどん』

作/長谷川摂子
かんたがお宮にある大きな木の根っこの穴から落ちて訪れた国は、何ともへんてこな世界でした。そこの住人“もんもんびゃっこ”“しっかかもっかか”“おたからまんちん” とかんたは仲良しになり、時のたつのを忘れて遊び回ります。けれどもすでに夜。遊び疲れて眠った3人のそばで、心細くなったかんたが 「おかあさん」と叫ぶと……躍動する言葉と絵が子どもたちを存分に楽しませてくれるファンタジーの絵本です。(福音館書店 1985年)

初出は、月刊「こどものとも」353号、1985年08月号◆本作は、降矢ななさんのデビュー作。そして、長谷川摂子さんとの最初のお仕事です ◆物語は…友だちを探して神社まで来たのに誰もいない。悔しくて、寂しくて、かんたはおもわずうたった、 「ちんぷく まんぷく あっぺらこの きんぴらこ じょんがら ぴこたこ めっきらもっきら どおんどん」。すると… ◆標題紙の絵に描かれた入道雲。夏真っ盛りです。そして、鬱蒼とした大樹に抱かれた小さな神社。その対比が不安感をそそります。 この後の異界へと繋がる導入も的確。本書の対象年齢に即した“妖怪”ものです。リズムのよいシンプルな文章と、スピード感のある展開が魅力。 妖怪たちも怖いようでいて、間の抜けたところもあって、それぞれが個性的で愛らしいキャラクター。かんたは不思議の世界を満喫してはみたものの、 ちょっと寂しくなり、お母さんのことを思い出し、現実の世界に戻ってくるという、無理のない筋立て。まさに“行きて帰りし”という、 ファンタジーの王道、昔話の約束事を踏襲した構成。安心して楽しめる冒険作品です◆幼稚園、保育園でも人気が高く、ロングセラー絵本の一冊。 ◆長谷川摂子さんとの絵本作りは、他に3作品。『きょだいな きょだいな』(1994)、『たあんき ぽおんき たんころりん』(2006)、『おっきょちゃんとかっぱ』(1997)(以上、福音館書店)



ナミチカのきのこがり

『ナミチカのきのこがり』

ナミチカがおじいちゃんと初めてのきのこがりに出かけると、おもしろいキノコが次々に現れます。食べられるキノコを探しながら行くうちに、 丸く輪になっている赤いキノコが見つかりました!ふしぎなことに…。(童心社 2010年)

実り豊かなスロバキアの森。身近にこんな森がある暮らし、そして物知りの優しい祖父の存在、どちらも素敵ですね。 ◆食べられないキノコに美味しいキノコ…と、なるほどな科学絵本風に始まりながら、森の奥にはファンタジー。 見返しの愉快なキノコたちは実は「ベニテングタケ」か!?毒をもつパワーは、妖力持ちの森の妖精なのかも。ナミチカもその力に誘われ、 大はしゃぎ。そして気づけば、薄暗い森の中で一人…。一気に不安に駆られ「おじいちゃん」と叫ぶ!大丈夫、そのマジックワードを口にすれば、 駆け寄るおじいちゃん。帰りの肩車はお約束ですね◆赤いキノコたちの生き生きとした多様な表情や動きの描写力、表現力は上手いなあ、面白いなあ、キャラグッズあったらなあ… ◆降矢さんの目を通して描かれる、スロバキアの身近な自然の姿は、微笑ましくも羨ましいばかりです。今年高崎で、このお話が実体験に基づいていることをうかがいました。 その当時、お義父さまの体調が一時悪く、何かその存在(思い出)を残したかった気持ちが描かせたというようにお話をされていました。 そういったことも踏まえページをめくると、家族の温かさに包まれた絵本だなあと感じます◆「おばあちゃんのキノコのクリームスープ」。 日本人だとクリームシチューやクラムチャウダーのような料理を連想するでしょう。でも、降矢さんのブログによると、“キノコをふやかした水と酢キャベツの汁がスープのだしになります。 炒めたみじん切りの玉ねぎと刻んだキノコと酢キャベツを煮込み、最後にサワークリームと塩を加え、とろみをつけてできあがりです。”とあります。 酸っぱい味?!寒い時期に温まるそうなので、これからの季節、作ってみたいですね。



三本の金の髪の毛 -中・東欧のむかしばなし

『三本の金の髪の毛 -中・東欧のむかしばなし』

訳/松岡享子
中・東ヨーロッパ(旧チェコスロバキア、ルーマニア、旧ユーゴスラビア、ポーランド、ハンガリー)で、長く語りつがれてきたふしぎな魅力に満ちたおはなしを、 美しくイメージ豊かな絵で贈ります。収録作品:「三本の金の髪の毛」「父さん子と母さん子」「かわいいメンドリ」「水底の主ニッカーマン」 「羊飼いの花たば」「カエル嫁」など全16編。(のら書店 2013年)

本書は、1979年刊ほるぷ出版の「世界むかし話シリーズ【東欧編】」に訳者である松岡享子さんが数篇加え新たに出版された1冊。 挿絵は降矢ななさんになって、素敵なコラボレーションですね◆今回、松岡さんが「一種独特の濃密な雰囲気、悪魔や魔女が、暮らしの中ですぐ身近にいるような感覚、 そして、これらの国々の民族衣装に見られるような、愛らしく華やいだ色合いがあったから」と評した東欧の昔話に添えられた降矢さんの挿絵は、 とても魅力的です◆お話のどの部分が「絵」なっているか、それを確認しながら読むのも楽しいもの。この場面が見たいと思ったところが挿絵になっている、 期待を裏切らない描写はうれしいものです◆大声で歌う「オンドリ」。「父さん子」の庭いっぱいの子どもたち。息を切らしている「かわいいメンドリ」。 小さな「ねがいっ皮」の男。「バーテク王」の美しい双子の娘。変身する「カエル嫁」…。皆さんはどの挿絵が、心に残りましたか? ◆松岡さんは「あとがき」に、本書に収録されているのは、1961年渡米し、1963年に帰国するまでの間に出会ったお話たちですとあり、 「とりわけふしぎな魅力を感じさせてくれたのが、当時東欧と呼ばれていた国々」のお話とあります◆旧版から、「語り手たちに、とくに好まれている16話を選」び、 「語り手たちの意見や経験をとりいれ、耳で聞いてよりわかりやすくなるように、もういちど訳文の見直しをし」た、とあります。 実際、長いようで、昔話らしく繰り返しが重ねられる展開など、「声に出して読む」ことの楽しさが伝わる文章となっています ◆少し長めのお話が聞けるようになった子たちに、是非、大人が読んであげてほしいですし、昔話好きのちょっと大きな子たちには、 こんな不思議なお話があるんだよと、紹介してほしいものです。



わらべうたでひろがるあかちゃん絵本 おせんべやけたかな

『わらべうたでひろがるあかちゃん絵本 おせんべやけたかな』

構成・文/こがようこ
「お・せ・ん・べ・や・け・た・か・な」でページをめくると、「やけた!」。いちまいずつ、おせんべが焼けていきます。 どのおせんべが焼けたかな? あかちゃんといっしょに指さししながら読んでも楽しい1冊。(童心社 2018年)
 

童心社から、こがようこさんと降矢ななさんによる、新しいシリーズ「わらべうたでひろがるあかちゃん絵本」誕生です ◆その中の一冊が『おせんべやけたかな』。わらべうたにあわせページをめくると、お煎餅の可愛い表情があらわれる! わくわくと楽しさが溢れます◆子どもの頃、膝突き合わせて手遊びしたなあと懐かしく、遊びに興じた「あの日」が思い出されました ◆長い時を経て培われた、知恵と子を愛しむ思いの結晶がわらべうた。それを風化させないよう、文化を繋ぐよう、伝えていくのは大人の仕事ですね。



どうぶつABCえほん

『どうぶつABCえほん』

作/安江リエ
Aはapple(りんご)、airplane(ひこうき)、ant(あり)など、子どもに身近な言葉を楽しい絵とテキストで味わえる絵本。 小学校ではじまる英語教育にも役立つ一冊です。美しく、ユーモアいっぱいの絵が楽しい絵本!(のら書店 2019年)

2019年1月刊行予定の新刊です。どこよりも早く、絵本原画を高崎でお披露目!乞うご期待ください!




 出久根育 (でくねいく)

1969年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業。 挿画を手がけた『あめふらし』(パロル舎)で2003年BIB(ブラティスラヴァ世界絵本原画展)のグランプリ、 『マーシャと白い鳥』(偕成社)で2006年日本絵本賞大賞を受賞。その他、絵本に『十二の月たち』『おふとんのくにのこびとたち』(以上偕成社) 『おふろ』(学習研究社)『山のタンタラばあさん』(小学館)『ペンキや』『ワニ』(理論社)『はるさんがきた』『アントリ・ベリーのながいたび』(鈴木出版)、 読み物の挿絵に『わたしたちのぼうし』『ルチアさん』(以上フレーベル館)「グリム童話集 上・下」(岩波書店)など多数の作品がある。チェコ・プラハ在住。



十二の月たち

『十二の月たち』

再話/ポジェナ・ニェムツォヴァー
善良なマルシュカと、自然をつかさどる十二の月たちのお話。マルシャークの戯曲『森は生きている』の原型といわれる物語。 (偕成社 2008年)
 
 

このお話は、ロシアやチェコ、スロバキア地方では広く知られ、様々なバリエーションが存在し、地域や国によって細部が異なります。 ◆『十二の月たち』のお話は…美しく心のきれいな娘マルシュカは、森のなかの一軒家に継母と姉と三人暮らし。 継母は継子のマルシュカが邪魔になり雪深い1月のある日、無理難題を言付け家から追い出します。マルシュカは寒さに震えながら、 歩きつづけ山頂に。そこには燃える焚火を囲む12の月がいたのです。◆出久根さんの描く本作の絵は、宗教画のような厳かなたたずまいが、 作中に描かれる自然の姿と相乗効果をあげ、物語の緊張感を高めているように感じます。聖なる善良なものたちと、醜悪なものたちの対比が表情や色のイメージなど、 読み手にも自然に伝わってきます◆作中の森は、『チェコの十二ヵ月』「クルコノシェ山地から」の章に、本作のために3月の山を訪ねたことが記されています。 そして、「私はヨーロッパの昔話を好んで描きますが、それは、大きな自然の美しさと恐ろしさ、不思議さがいつも背景にあるからです。 昔々、おとぎ話の時代には、機械も技術も乏しく、人間は自然に対して無力でしたから、ファンタジーの世界で自然を自由に操りたかったのでしょう。 雪山に突然の春の花畑が現れたり、山をひとまたぎにしたかと思えば、担いで投げてしまったり…」と語っています ◆絵本では、評論社、ミキハウス、福音館書店、フレーベル館とあり、読み比べ、挿絵比べをするのも楽しいです。 『森は生きている』としては、岩波書店、青木書店があります。



もりのおとぶくろ

『もりのおとぶくろ』

作/わたりむつこ
けがをしたおばあちゃんを元気づけるため、森のおとさがしに出かけたこうさぎたち。あたたかな春の森で見つけた、 不思議なおとぶくろとは……?語りかけるようなやさしい文章と、美しい絵が織りなす、味わい深い絵本です。 第58回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞(のら書店 2008年)

出久根さんの描く子うさぎは、いわゆる“可愛い”というより、懐かしい感じのする、素朴で慎ましい子たちだと感じます。 気負いがなくとても自然体で、共感できます。そんなこうさぎたちが、おばあさんのために集めるのは「森の音」。目に見えない形のないものを、 「どうやって!?」、大変な冒険ですね。◆「さやさや そよそよ 風のおと、しょろろん、しょろろん、水のおと、しゃらしゃら しゃららあ はっぱのおはなし、 ちょくちょく ぴろろん とりのうた」と、とても素敵な表現。日常の生活の中で、当たり前すぎて感じることを忘れがちな感覚を刺激してくれる、 こんな絵本との出会いって、本当に貴重だと思います。◆絵本ナビの『もりのおとぶくろ』のページに、出久根さんからの手書きのメッセージに、 幼い頃に本作のわたりむつこさんの『いちごばたけのちいさなおばあさん』が大好きだったこと、そのわたりさんのお話に絵を描くことができた感激が綴られています。 アクセスの可能の方は、ご一読を。◆作中の子うさぎの衣装や刺繍をするおばあさんの姿にチェコ色がうかがえますね。また挿絵の随所に、うさぎ耳意匠がかわいいです。 表題紙のうさぎのお家や、おばあさんの部屋。あなたはいくつ見つけられましたか?◆続編に、『こうさぎと4ほんのマフラー』(2013)、 『こうさぎとほしのどうくつ』(2016)があります。



命の水 チェコの民話集

『命の水 チェコの民話集』

編/カレル・ヤロミール・エルベン編
”チェコのグリム”エルベンの集めた珠玉の昔話20編。チェコとその周辺の国々(スラブ地方)に伝わる民話を収録した珠玉のアンソロジー。 「金色の髪のお姫さま」、「命の水」、「物知りじいやの三本の金色の髪」、「カエルの王女さま」、「婚礼衣装」、「この世に死神がいてよかった」ほか。 人も動物も生き生きと活躍するボヘミアの魔法や知恵、不思議あふれる世界へ!ブラティスラヴァ世界絵本原画展グランプリ受賞画家・出久根育のオールカラー絵本! (西村書店 2017年)

この本が日本で出版された2017年は、日本におけるチェコ文化年(国交回復60周年)でした。チェコでは2011年に編者エルベンの生誕200年を記念して出版されました ◆出久根育さんのチェコでの初仕事が本書で、ご本人にとっても思い出深い作品と、西村書店にHPにメッセージを寄せています。日本人がチェコの空のもと、 国民的な作品の挿絵を担当する…。勇気がいったのではと危惧するのは私だけでしょうか。でも、出久根さんはやり遂げたのですね。 オールカラーイラストは出久根育さんのお得意のテンペラ画です。目を引く見返しの部分は、「命の水」の場面。王様の末の王子がたどり着いた“その山は水晶のように光を放ち、 山にそびえる城は銀でできていました”というところですね◆民話、童話にはほのぼのとした側面と残酷で深淵をのぞくような側面を持つものがあります。 チェコの民話はその文化、歴史的背景を含んで、どれも影があるように感じます。本書の表紙を見ても、明るく輝く太陽に目が行きがちですが、右下を注視すると…。 民話のもつ雰囲気をよりかき立てるのが、出久根育さんの描くイラストです。可愛らしくもあり、陰鬱さをも潜ませて、その世界の裏側までを体感させてくれます。 一筋縄ではいかないそのたたずまいは「あなた」の心をとらえます。



チェコの十二か月 ―おとぎの国に暮らす―

『チェコの十二か月 ―おとぎの国に暮らす―』

何処の国に暮らしても、表現者の目は常に人の暮らしの向こうにある本質を見つめています。 2006年から始めたウェブエッセイはこれからも緩やかに続く予定です。(理論社 2017年)
 
 
 

理論社のHPにある出久根育さんのページは「プラハお散歩便り」。連載開始は2006年6月1回目の「お散歩さん」から最新更新の2018年6月67回目の「緑のゆび」まで、 12年続くロング連載です。◆チェコに移り住むことになった出久根さんは、メールで仕事のやりとりをする中、 近況報告がてら身近な出来事を「追伸」に書くうち、それが「プラハお散歩便り」に。そして、春から冬までの季節のお祭りや風俗風習をまとめた、 『チェコの十二ヵ月 ー おとぎの国に暮す ー』と書籍化。◆出久根さんが暮らすチェコは歴史、自然、そして人々の暮らしが興味深く、 年中行事を今も大切にし、心から楽しんでいる様子は、懐かしさのなかにも刺激的な空気に満ちています。 そして描かれている挿絵も、温もりのなかにも重く垂れこめるような雰囲気があってとても素敵です。



あっちいけポイ

『あっちいけポイ』

オブラーツ通りのマリオネット屋の前にたたずみ、ショーウィンドーに手をつき中の人形たちに目を凝らす少女は、 「道化師人形」と目があい、人形が「ビルケ」と言いながら右手を挙げた!少女は怖くなって急いで家路に…。 その晩は、お母さんの注意も無視して、宿題をしないで寝てしまう。そんな少女の家の窓に、夜の街路に大きな影を引く道化師人形…。 (福音館書店 「おおきなポケット」120号 綴じ込み漫画 2002年)

漫画であっても画風はそのままに、出久根さんのタッチが面白い◆人形とはいっても、抱き人形の可愛らしさとは次元の異なる、 独特な雰囲気の操り人形。特に、東欧の人形劇文化の醸し出す陰影のある不気味さと、迷路のような道を追跡する不安感、 そして地下の深くにある人形劇場…◆本作は、大人が手にしても不安を感じるのに、この「おおきなポケット」の読書対象者たちとしては、 読後、忘れられないものと脳裏に心に刻まれたんじゃないだろうか。そしてお話の終わり近く、人形師の持つお人形は…。 表紙の小さな人形劇舞台の少女人形は…操り糸はついていない…◆2002年に小学校低学年向けの月刊誌の綴じ込み付録として発表された本作は、 作品集に収められるまで、なかなか目にすることができず、幻の作品と言われていました。



あめふらし

『あめふらし』

訳/若松宣子
美しく聡明だが残酷な王女と結婚しようと、若者は鳥や魚やキツネの助けを借りて、王女とのゲームにのぞみます。(偕成社 2013年)

原画1点を展示します!



 チェコ・スロバキア・ポーランドの絵本たち

三国のこどもたちはどんな本を読んで育っているのでしょうか。ぼんやりと知っているそれぞれの国の文化や歴史もあわせて、本で紹介します。