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加古里子(かこさとし)

1926年福井県武生市(現在越前市)に生まれる。東京大学工学部応用科学部卒業。工学博士。 技術士(化学)。児童文化の研究者でもある。現在も、出版を中心に幅広く活躍。作品は600点余。 2008年菊池寛賞受賞、2009年日本化学会より特別功労賞、第40回巌谷小波文芸賞を受賞。 出身地には、2013年かこさとしふるさと絵本館「砳」(らく)、2017年夏 武生中央公園内に 加古里子監修のもと「だるまちゃん広場」「パピプペポ―広場」「コウノトリ広場」が開園。

「不屈の人」。それが加古さんだと思います。本書の中で、加古さんも何度も挫折を味わっているのがわかります。 けれど、そのたびにそれをバネにするがごとく、立ち向かい跳ね除け、跳ね返しています。 人間だれでも、その人生の中で幾度となく挫折を味わいます。その時、大概の人が流され、 諦め、日和見、「そんなものさ」と長いものにまかれるのが常です。それも、保身のため、 妥協の産物として当たり前なのです。けれど、加古さんは諦めない。本当に不屈の人です。 けれど、そこには人間の善性、可能性を信じる思いがあってのものなのです。



だるまちゃんとてんぐちゃん

『だるまちゃんとてんぐちゃん』

「だるまちゃんは友だちのてんぐちゃんの持っているものを何でも欲しがります。てんぐのうちわや素敵な履物、 なんとしまいには鼻まで。お父さんのだるまどんは思いつく限りの物を集めてきますが、だるまちゃんのお気に入りは いつも意外なところに……。だるまちゃんとだるまどんはどんなアイデアを思いついたでしょう? ユーモアあふれる物語と楽しいものづくしの絵本。全8作、大人気「だるまちゃん」シリーズの第一作です。(福音館書店 1967年)

だるまちゃんは友達のてんぐちゃんの団扇や高下駄が羨ましくて、「欲しい」とお父さんにねだります。 子どもの頃そんな「無理」を言った覚えのある人も多いはず。作中では、その願いを叶えてやろうとする お父さんの姿も微笑ましいもの。(このお父さんのモデルは加古さん自身のお父さんに通じるものがあると言います。) その努力を加古さんは、お得意の見開きをいっぱいに描かれた数々の物たちで埋め尽します。 ここが作品の醍醐味ですね。その中からただ選ぶだけでなく、工夫をするところも面白く、 だるまちゃんのアイデアのヒントが隠れていたりと、それを探すのも楽しいです。 そして毎回てんぐちゃんに披露しに行くのですが、その度てんぐちゃんは、「すてきだね」と褒めてくれるやさしさにも注目ですね。



からすのパンやさん

『からすのパンやさん』

泉が森の黒文字3丁目のかどにからすのパン屋さんがありました。そのパン屋さんは子どもたちの意見をきいて、 面白くてすてきなパンをどっさり焼きました。子どもたちは大喜び。暗いうちからお店にでかけます。 大人たちも何事かとかけだします。おかげでパン屋の店の前で大騒動が…。(偕成社 1973年)

なんといっても、この絵本の見どころは、色々な形のパンが圧巻の見開きページ。スターパン、 おかまパン、ほんパン、はぶらしパン、かみなりパン、おちょうしパンなど、80種類以上のパン。 子どもたちも興味津々、食い入るように見入ります。でも、読み聞かせをする大人には、 楽しいながらもなかなかの難行です。このお話には、パンやさんの家族以外に、たくさんのカラスが登場するのですが、 その表情がとても豊か。その様子もあらためて「あとがき」にふれ、納得しました。1羽ずつ丁寧に描かれ、 お仕事中の消防士やテレビ局のカラスや結婚式途中のご一行などなど、個と群集が織りなすストーリーがいきいきと描かれ、 楽しさに溢れる絵本となっています。



どろぼうがっこう

『どろぼうがっこう』

まぬけな校長先生と、まぬけな生徒たちの、世にもおかしなどろぼう学校のおはなしです。ある真夜中のこと、 みんなは「ぬきあし さしあし…」遠足にでかけ、町でいちばん大きな建物にしのびこみました。 が、そこはなんと刑務所。思わずおかしさがこみあげてくる、ゆかいなお話です。(偕成社 1973年)

いかつい面相の「かわいい泥棒学校の生徒たち」の可愛らしさが、笑いのツボに。 遠足前の「せんせい、おかし・・・」の当たり前のくだりも、この面子だからこそ笑いに。 ギャップ萌えの走りですね。



小湊鐵道沿線の旅 出発進行!里山トロッコ列車

『小湊鐵道沿線の旅 出発進行!里山トロッコ列車』

千葉県五井駅から養老渓谷まで続く小湊鐵道の一部区間を、トロッコ列車が走ります。ドイツの蒸気機関車の設計図をもとに、 クリーンディーゼルエンジンの蒸気機関車が、風を感じる、ガラス窓のない吹き抜けのトロッコ列車を引っぱります。 沿線には見所がいっぱい。里山の自然を肌で感じることができ、さらに歴史、地理にまつわる話も多く、 さまざまな分野で興味深いローカル線の旅を、かこさとしさんが案内する知識絵本。日本各地にある里山にも、 大切な話がたくさん眠っているはずです。自然と一体となって、ゆっくりゆっくり旅をすることを思い起こさせてくれる、 大人と子どもが一緒に楽しめる絵本です。(偕成社 2016年)

90歳を超えたかこさとしさんの描きおろし絵本!ついついお年のことが先に立ってしまいがちですが、 やっぱりスゴイです。内容も、かこさんらしさ満載。「微に入り細に入り」をまさに目にする一冊。 この本を開くだけで疑似鉄道の旅状態!では、困りますね…。 子どもはもちろん、大人もこの一冊を抱えて小湊鐵道トロッコ列車の旅に出発せねば!



伝承遊び考

『伝承遊び考』

著者が50年以上にわたって収集した伝承遊びを豊富な図版資料や遊びにともなう唱え言葉、歌とともに紹介します。 伝承遊びが創出・改変・淘汰されながら、時代の流れをこえて、子どもから子どもへと伝えられてきたのはなぜか、 伝承遊びが子どもの心をつかんではなさない理由を分析し、そこに秘められた子どもの姿を探ります。(小峰書店 2006年~2008年)

「遊びが廃れる!伝え残すことが大人の仕事」と考えがちですが、伝承遊びだからこそ、そこは子どもの領分。 こういう遊びって、子ども同士で伝え合うもの。大人のあずかり知らぬところで培われるものだとも考えていたら、 ほんとう、加古さんは物事の本質を鋭く見抜く力をお持ちです。